助成事業の概要
法人事業として、聞こえない子どものいるご家族を対象に、講演会・ワークショップ・手話教室・相談会・ランチ会などを実施しています。
また、聴覚障害児児童クラブきらきら(児童発達支援事業と放課後等デイサービス事業を併せ持つ多機能型施設)も運営しています。
今回、いつもの交流の場から飛び出し、初めての大勢での交流イベントを開催するとのことで、おじゃましてきました。
みんなで初バーベキュー!
10月某日、いつもの前橋市の拠点を離れ、太田市のぶどう棚下・全天候型バーベキュー会場に、きらきらの仲間たちが続々と集まってきました。
きらきら設立以来、全体でのおでかけ交流は初めて。また、今回初めて参加する人も、今回のためにボランティアを申し出てくれた人もいます。
聞こえなくてもわかるように、時計をつかって今日のスケジュールを確認します。
「この時間くらいに始めるよ。食べる準備を始めるのがこの時間くらい。」
手話で活発に交流
大人、子ども、聞こえる人、聞こえない人、通訳の人。
ふだんの交流の場に来ている人、初めての人、久しぶりの人。
そこかしこで自然に、手話や身振り手振りで会話が弾みます。
「お仕事はされてるんですか?」「はい3時まで。」
初めましてのお母さん同士も、通訳の方がいることで安心して会話が進みます。
「あの人は60歳くらいじゃないかな。」
「あなたも太ってなくてびっくり。」「太らないように運動してるよ。」
大人同士の何気ない会話も、もちろん手話です。
レクリエーション係も手話で真剣に打合せ。
「長くできた方が優勝という方法もあるけど、それができないから・・・」
いきいきした手話を子どもたちが学ぶ場
聞こえる親子であれば、生まれて間もなくから家庭の中での会話が自然に耳に入り、「言葉」だけでなく「意味」や「思い」も体得していきます。
話せるようになると、自分の思いを言葉で表し、コミュニケーションする中で自我を形成していきます。
でも、子や親が、どちらか一方でも聞こえないと、その自然な発育の流れが途絶え、聞こえないこと以上の生きにくさを抱えることもしばしばです。
子どもが育つうえで、手話で自然に自己表現できる環境が、絶対的に必要です。
きらきらの交流では、そのことを常に大切にしています。
自分の言葉のまま語り合う、当たり前の場をつくる
今から15年以上前、私が助成担当として出会った、「デフフリースクール・ココロ」という団体があります。
その頃は聾学校では手話禁止で、聴覚障害児同士のコミュニケーションが取れず、大人を介さないと意見の表出もままならない状況でした。
そんなときに共同募金で助成したのが、デフフリースクール・ココロが行う学習交流会。聴覚障害者のロールモデルをゲストに呼んで聴覚障害のある子どもたちが学ぶ講座です。
ココロのみなさんはずっと、手話での対話の必要性を訴え続け、手話で学べる学校の設立を望み、そして子どもたちが自由に将来を思い描くための支援を続けていました。
「きらきら」を設立したメンバーは、そのココロに通っていた子の親や関係者です。
手話でのコミュニケーションを大切にし、子どもたちが当たり前に自由に過ごせる場所を作りたい。そう願って設立したのが「きらきら」です。
現在の主な事業は聴覚障害児向けの放課後等デイサービスですが、それだけでは真の交流はできないので、きょうだい児も含めた交流や子育て支援などを並行して実施しています。
手話は広がりつつあります。でも…
「手話言語条例」が全国の自治体で次々に制定され、手話が大切な言語であることの認識は広がりつつあります。
群馬県でも2015年に県が制定し、その後県内の各自治体でも制定され、2024年9月現在で12市8町村にまで広がってきています。
前述の聾学校でも、この条例を機に、手話の使用が増えつつあります。
また、条例を制定した自治体では、手話講座が積極的に開催されるなど、手話に対する関心が確実に高まってきています。
しかし、手話を広げるための「支援者」が、圧倒的に不足しています。手話通訳者育成のための指導者を育成する公的なしくみは、残念ながらありません。
また、聴覚障害の早期診断が進んできていますが、診断の後、タイミングよく子育てに生かせる手話サポートのしくみも、ほとんどありません。
だから、きらきらでは、聴覚障害児の子育て支援のための講座を、手話やコミュニケーションの大切さを具体的に伝える場として、継続的に実施しています。
手話の広がりと併せて、支え手の支援の充実も、切に望みます。
自分の言葉のまま語り合う、当たり前の場をつくる
設立メンバーのお一人が、15年前と今とを比べて「本当に続けてきてよかった。」と仰っていました。
前述したとおり、聴覚障害児のコミュニケーションは、手話を使えない環境では、大人を介さないと意見の表出もままならない状況です。
手話が主流でなかった15年前は、子どもが自ら進んで他の子に接して仲良くなるなんて、想像できなかったとのこと。
この日の交流会での子どもたちの様子を眺めながら、しみじみ、語ってくださいました。
コミュニケーションの手段と機会は、障害の有無にかかわらず等しくあるべき。
私自身も、15年前に助成担当として抱いた思いが、15年越しで叶っていることに、心からうれしく思った一日でした。
こういった交流の機会が、もっと日常的に増えますように。
共同募金はこれからも、社会課題を解決するための市民活動を、応援していきます。
助成先情報