助成レポート 子ども・若者支援 社会課題

【助成担当レポート】「ありのまま」が「あたりまえ」になる日まで-LGBTQ+支援-

助成事業の概要

ハレルワは、LGBTQ+(セクシュアル・マイノリティ)の支援と啓発を群馬県で先駆的に取り組んでいる団体です。月1回の交流会から始まった活動は、「にじいろ成人式」を企画するなど活動の輪を広げ、2021年には常設の居場所を構えるまでになりました。LGBTQ+の認知度は上がってきましたが、支援の必要性やしくみづくりはまさにこれからです。
群馬県共同募金会では、前橋市支会の地域助成や「つかいみちを選べる赤い羽根募金」を活用して、この活動を支援しています。

 

「まちのほけんしつ」オープン

前橋市千代田町のアーケード街にある空き店舗を改装して、LGBTQ+や不登校など生きづらさを抱えた人の常設の居場所を2021年7月にオープンしました。
LGBTQ+支援の「ハレルワ」と不登校ひきこもり支援の「アリスの広場」が共同で運営し、改装資金はクラウドファンディングで集めました。そして、メンバーみんなで1年以上かけて改装作業をしてようやく完成。思いの詰まったその居場所は、一度来たらまた寄りたくなる“ホッとする空間”です。
2団体で共同運営する「まちのほけんしつ」(通称「まちほけ」)は、曜日替わりの担当制で、ハレルワが担当するのは週3日です。1回4時間開所で5~10名ほどの利用がコンスタントにあり、時が経つにつれリピート利用者も増えてきて、確実に“居場所”になってきている様子が窺えます。

「まちほけ」外観。アーケード街の一角にあります。

中に入って左奥にはおしゃれなカウンター、右手前には小上がりの畳スペース

 

活動のはじまりは月1交流会「ハレの輪」

ハレルワが活動を始めたのは2015年。LGBTQ+の本人や理解者が現状を語り、ときに議論を深める場として、月1回の交流会「ハレの輪」を活動開始以来ずっと続けています。そして次第に、その場がみんなのよりどころ、“居場所”になっていきました。
「月1でなく、行きたいと思ったときに行ける場所がほしい。」とみんなが思うまでに時間はかかりませんでした。そしてその思いは、自分たちのためだけでなく、今まさに思い悩んでいる若い人たちを受け止めていきたいという、“決意”のような“感謝”のような気持ちも加わって、今の「まちほけ」オープンに繋がっていきました。
「ハレの輪」は、現在はコロナ禍のためオンライン開催となっています。群馬県内の人だけでなく、県外・海外からの参加もあり、輪が広がっています。

今はコロナ禍でオンライン実施の「ハレの輪」

 

悩んでいる人たちがコロナ禍で孤立しないように「LINE相談」

居場所や交流会への参加は心のハードルが高かったり、またコロナ禍で思うように外出できなかったり…。若い世代など特に多感な時期に悩みを抱え続けることは、発達や命にかかわる問題になることがあります。自らのセクシュアリティを受け止め、身近な人に理解してもらうプロセスで、タイミングよく誰かに相談できれば、きっと心が軽くなります。
コロナ禍の2020年7月から始めた月1回のLINE相談は、1年半が経過して120件の相談を受けています。約3割がリピーターで、親や友達へのカミングアウトのことから、学校や職場での配慮の求め方などの日常生活での対応について、解決を先延ばしせずに聞くことができて好評です。さまざまな場面で試行錯誤してきたメンバーが相談員となって親身に対応しています。
 

LGBTQ+の困りごと…ありのままがあたりまえでないこと

LGBTQ+の人は日本では人口の8.9%(13人に1人)と言われています。LGBTという言葉の浸透率はここ数年で飛躍的にアップしているものの(2018年68.5%→2020年80.1%)、意識調査では「知っているけど課題意識はあまり高くない『知識ある他人事層』」が最も多いとのことです(いずれも電通調べ)。LGBTQ+の人の困りごとの多くは、おそらくこの「他人事」とされることに由来すると思います。
かつて、障害福祉の分野で社会のバリアフリー化を進めるとき、「なぜここに段差が必要なのか」ということを、みんなが一つ一つ丁寧に意識して段差を無くしていきました。そしてハートビル法、交通バリアフリー法、バリアフリー新法と整備され、まちづくりでそれを心がけることが当たり前になりました。
LGBTQ+支援の文脈でそれを準えると、今どの段階まで進んでいるでしょうか。
名簿、トイレや更衣室、制服、髪形といった学校時代にある性区分の取り扱いから、結婚、そして婚姻を前提とした各種保障など…。
「なぜその区分けが必要なのか」ということを、みんなが一つ一つ丁寧に意識していく段階である今、ハレルワのメンバーは、自らの体験でもって意識化を促そうと日々頑張っています。
自らのセクシュアリティを受容し、大切な人にカミングアウトするまでの間も苦しいのに、そのあとの社会理解が進んでいなくてさらに苦しい。自らのありのままが社会のあたりまえでないという不条理。
でも、社会が変われば改善されます。

セクシュアリティは虹色のようにグラデーション、多様です。

 

活動を継続し、多世代に働きかけていく

社会の意識を変えていく過程は、かつてのバリアフリー化のときのように時間と手間暇とお金がかかる取り組みです。
特に、若い世代の人がセクシュアリティに向き合う時期に相談できるしくみが必要で、ハレルワが取り組む「まちほけ」も「ハレの輪」も「LINE相談」もすべてそのための取り組みです。事業を始める足掛かりとして助成金が手助けできますが、活動はもっと長いスパンで持続していかなければなりません。長く続けないと、社会を構成する多世代に働きかけられないのです。

赤い羽根共同募金の助成をきっかけに、一人でも多くの人がこの課題に関心を寄せて下さることを、切に願っています。

代表の間々田さん。自らの体験とこれからの希望について、各地で講演しています。

※「つかいみちを選べる赤い羽根募金」にエントリー中です。ご寄付もぜひご検討下さい。
(ハレルワの寄付募集ページはこちらです。)

助成先情報

一般社団法人ハレルワ
〒371-0022 群馬県前橋市千代田町4丁目18-4
https://hareruwa.org/
TEL 050-5490-3182

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