助成先団体からの「成果報告」を掲載します。
詳細は団体が作成した「活動成果報告書」をダウンロードしてご覧ください。
助成概要
助成名 | 新しい活動を「つくりだす」助成 |
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団体名 | 特定非営利活動法人 ビーイング |
事業名 | みんなの居場所プロジェクト『大きな樹の下のみんなのおうち』 (ひきこもり者支援事業) |
助成額 | [2021年] 3,000,000円 [2022年] 1,963,779円 |
取り組みの概要
1 協働してつくりだす (ひきこもり者と支援者の共同作業) |
◆居場所室内DIY(大工作業、仕事体験) ◆畑をつくろう(農作業、就農体験) ◆お弁当をつくろう(調理・事務作業、就労支援) |
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2 安心安全の居場所づくり | ◆いっしょに作って食べよう (生活体験・自立支援として実施) |
3 居場所に繋げる・繋がる | ◆相談事業(家庭訪問、メール相談など) ◆交流会、相談会、家族会 |
2年間を振り返って
2023年9月某日に弊会職員が居場所を訪問し、ビーイングのみなさんに今までの活動を振り返って語っていただきました。
◎「音あそびの会たんぽぽ」の活動が出発点
2011年3月の「東日本大震災」。日本中が悲しみに包まれるなか、「私も何かしなければ。でも現地には行けない。ならば、今いるこの地域の人たちを笑顔にしたい。」と思ったと、片岡さんは当時を振り返ります。
片岡さんは、現在はNPO法人ビーイングの理事長ですが、そのときは楽器屋さんに勤める一般的な会社員でした。
2011年7月に、ピアノの先生等と5名で始めた、「音あそびの会 たんぽぽ」の活動。
障害児者施設、子どもの施設、高齢者施設などへ訪問し、一緒に歌ったり手遊びしたりを手探りで続け、訪問回数は年間40回にもなりました。
回を重ねるうちに、支援先施設の人たちとより良いコミュニケーションをしたいと思うようになり、カウンセリングを学び始めました。
学んだのは「生活に生かすためのカウンセリング講座」です。この講座では、学んだことを地域に還元するという理念の下で実施されていて、その流れで不登校児童生徒の支援をするようになりました。
不登校の子がたんぽぽの活動に同行するなど、音楽活動と不登校支援とが自然な形で並走するようになりました。
そして、不登校支援からの地続きで、ひきこもり支援へと発展していきました。
◎ひきこもり支援をボランティアで続ける
ひきこもり支援は、訪問してもご本人と会うことがなかなかできず、直接的な支援が始まるまでに長い月日がかかります。
ご本人に会えたあとも、お互いが信頼し合うまでにはさらに時間が必要で、とても長いトンネルをともに歩いていくような、先が見えない支援です。
そのような難しい支援を“ボランティア”で続けるのは、なぜでしょうか。
片岡さんは、次のように話してくださいました。
「ずっとひきこもっていた人が、元気になって巣立っていく。できなかったことができるようになる。その瞬間に立ち会えるのがうれしくて。」
この瞬間を迎えるためのアプローチは、時間で区切れない、お金に換えられない、と言い切る片岡さん。
この支援を「自分は好きだからやっている」という思いを持ち続けなければ、心から喜ぶことはできない…と。
訪問支援の際も「何を話そうかな」「今日は会えるのかな」「でも、会えないかも…」と期待と心配がないまぜになりながら、“そのとき”のために根気強くかかわり続けています。
◎「居場所」があるから、できること
ビーイングでは、月何回かの交流会を、会場を間借りして実施してきました。
「ひきこもりの人や家族が、悩みながらも、思い立った時に来られる場所がほしい。」
そう願い続けてきて、ようやく叶いました。
共同募金の助成金で民家を借りて、ひきこもりの人といっしょに改修工事をして、2021年10月にオープン。
現在は安中市の委託事業として運営しています。
常設の居場所は、ひきこもり者が「今度、居場所に行ってみようと思う」と動き出すきっかけになっている、と支援者の犬飼さんは語ります。
訪問支援をしていて、居場所があることでご本人の思いを行動につなげやすくなった、と実感しているそうです。
居場所の運営に携わる鈴木さんも…
「居場所に向かうときに『今日は正直疲れているし…』と思っても、行けばボランティアの仲間がいて、元気をもらえる。」
そして、普段はなかなか目を合わせられなかったり、話せなかったりするひきこもりの人が、今日は目を見てくれた。
そういった何気ない変化に気づくのも、常設の居場所の効果だと話してくださいました。
行政にお勤めだった佐藤さんは、昨年から本格的に居場所運営にかかわっています。
「行政ではできないことも、ボランティアだから自由にやりがいをもってできたりする。ひきこもり者の変化に喜び、支援者として成長するボランティアの仲間を見ていると、自分も元気をもらえる。」と、居場所を介して支援者も成長していると話してくださいました。
◎何年後かを、信じて支援する
ひきこもり者支援という難しい取り組みを、やりがいや熱意を主軸にボランティアで継続することについて、筆者は以前、“脆さ”を決めつけて意見してしまったことがあります。
でも、この取材で改めて分かったのは、片岡さんにとってひきこもり支援が「特別なこと」ではない、ということでした。
2011年の東日本大震災を機に始めた音楽ボランティア活動からの“地続き”で、「困っている人を何とか支援したい」という一心で今に至っています。
今地域に配っているひきこもり者支援の周知チラシを、今ひきこもっている人が、2~3年後に握りしめてこの居場所にきてくれるんじゃないか…、と信じて活動を続けています。
好きだから。自分でやると決めたから。
ボランティアのしなやかさ・底力に、心から尊敬します。
そして、助成する側も、同じ覚悟ができているのか?助成の良し悪しを助成先のせいにしていないか?
助成担当者として自分自身を振り返り、深く反省した取材となりました。
赤い羽根共同募金は、これからも、このような志ある活動を、応援していきます。
助成先情報
〒379-0133 群馬県安中市原市一丁目13番地4号
https://beingannaka8800.wixsite.com/home
TEL 080−1036−8800